『久しぶりの勉強! うれしい夏のはじめだわ。』
70代後半の女性Bさん。
神経心理検査の書字課題より。
前回のブログでも書いた通り、もの忘れ外来での神経心理検査(認知機能検査)を、嫌がるどころか、前向きに取り組んでくださる方のなんと多いこと!
検査課題に取り組むことはともすれば苦痛にもなることですが、捉え方次第ですね。「久しぶりの勉強!」と、この方の弾けるような喜びが感じられます。

高齢の方々とやりとりする日々の中で、印象に残ったできごとを綴ってみました
『久しぶりの勉強! うれしい夏のはじめだわ。』
70代後半の女性Bさん。
神経心理検査の書字課題より。
前回のブログでも書いた通り、もの忘れ外来での神経心理検査(認知機能検査)を、嫌がるどころか、前向きに取り組んでくださる方のなんと多いこと!
検査課題に取り組むことはともすれば苦痛にもなることですが、捉え方次第ですね。「久しぶりの勉強!」と、この方の弾けるような喜びが感じられます。
『このたび、面白い経験をさせて頂きました。ありがとうございます。』
80代の女性Aさん。
神経心理検査の書字課題より。
もの忘れ外来での神経心理検査(認知機能検査)は侵襲性が高いと言われます。実際、記憶力の低下などから不安を抱えている方に、そうした能力の衰えに直面するような課題をやっていただくわけですから、苦痛を感じる方も少なくありません。
検査は、記憶に限らず、様々な認知機能を評価するため、多くの課題を組み合わせて行い、30分から1時間と、長い時間も要します。
検査をするこちら側も、相手を試すようで、申し訳ないような気持ちになりますし、実際に、検査に抵抗を示したり、拒否される方も一定数いらっしゃいます。怒ってしまって、中断せざるを得ないこともあります。
ただ、私が十数年たくさんの方に検査を実施してきて実感し、驚くのは、想像以上に検査を楽しまれる方が多いということ。
もちろん、抵抗感や嫌悪感を抱えながらも表面上にこにこと取り組んでくださる方もいらっしゃいますが(そういう方はだいたい分かります)、本当に面白がって、関心を持って、楽しみながら課題に取り組まれる方のなんて多いこと!
当然、こちらも相手が嫌な気持ちにならないよう最大限の配慮はしますが、それでも、です。
「こんなこと、初めてやったけど面白かった」「楽しかった」
そんな言葉に、心からほっとしますし、私もどんなことにも興味を持って楽しめる人でありたいとな、いつも思わされます。
『歳をとると、プライドが高いと生きにくい』
歯科医師だった70代後半の男性Aさん。
神経心理検査の書字課題より。
寡黙な方でしたが、書いた文章を受け取って確認し、次の課題へ移る束の間、何か、目に見えない静かな交流があったように感じます。
その文章について、もう少し何か話していただいたほうがよかったのだろうか。
分かりません。
でもそんなふうに書けるのは強さだと感じました。
Aさんはその後MCI(軽度認知障害)と診断されました。
「3か月くらい前に、急に歩けなくなって」
もの忘れ外来での神経心理検査前のフリートーク時、80代の女性Yさんはおもむろにそう述べ、次のように語りました。
「同居している長男夫婦がいつも旅行に連れて行ってくれる。なのでたまには夫婦2人で行ってらっしゃいと、毎年1回は2人だけで行ってもらっている。
ところが今年は、その旅行の当日に突然、歩けなくなった。
なので夫婦旅行はキャンセルになってね。
・・・そんなことがありました」。
<そうでしたか・・・>私が言うと、少し間を置いて、
「今思うと、今年は1人になるのが不安だったのかもしれないわね」とYさん。
そんなふうに振り返られるのはすごいなと思いました。
心と身体って本当に不思議で、こういうことはよくあるのですが、ほとんど無意識です。偶然、たまたま、で終わらせます。
人は自分の弱さをあまり認めたくありませんから。
静かに語るYさんの優しいまなざしを見つめながら、長男さんご夫婦も、きっと優しい強さを持った方々なのではないだろうかと想像しました。
『今日はすずしい
とおもったがあつい』
神経心理検査の書字課題<ここに文章を1つ書いてください>で、80代の女性Kさんはこう記しました。
『今日はすずしい』と書いたところで、(いや、何か暑いな)と思い直して後半を追加したのか、あるいは例えば朝起きたときには(涼しい)と感じていたが日中になったら(暑いな)と実感しているということなのか、はたまた(今日は涼しい一日かと思っていたが暑いじゃないか)という気持ちを書いたのか。
次の課題へ移る数秒の間にこんなことを考えてしまいました。
『今年も きたかよ さくらんぼ』
80代の女性Hさん。
神経心理検査の書字課題より。
山形出身のHさんとは同郷ということで話が盛り上がり。
その後、標語のような作文をしてくださいました。
毎年6月になると田舎のきょうだいから嬉しい贈り物が届くそうです。
『私の身体について こんなに想ってくださるなんて 感謝です』
神経心理検査の書字課題でこのように綴った80代の女性Tさんは、続けて静かに次のように話されました。
「家ではごはん作って出して…、毎日いろいろみんなのお世話して。自分の身体のことを『どう?』なんて言ってくれる人はいません。でもそういうことを昔と同じようにできてるってことかなって思って…。私は、やってくれて当たり前と思われてるほうがいいのね。できてる、ってことだから」。
そして「おかしなものね、歳を取ると…」と言ってふふふと笑いました。
私がTさんの体調を心配して何気なくかけた言葉に、Tさんがふと感じたこと、気づいたことを述べ、私はそれを聴く…。こういう時間を大事にしたいです。
『記念になるように答えたいです。』
90代の女性Tさん。
神経心理検査の書字課題より。
重い難聴のあるTさんは、PC画面に表示された教示文を読みながら、真剣に検査を受けられました。
「耳が悪いから、人と会話しても互いにつながらないのが一番の悩み」とおっしゃっていましたが、「今度ひ孫が生まれるの。ものすごく希望」と明るく前向き。
一生懸命答えてくださったので、ここにも記念します。
「まっていた 春が来た 来た。」
80代の女性Sさん。
神経心理検査の書字課題より。
その後から私は、春らしい光景に出会う度に、
わくわくした気持ちで「春が来た、来た」とつぶやいています。
もちろん心の中で、です。
「今日は色々な検査をして頂いて
嬉しいやら 結果が心配になるやら
大切な1日です。」
80代の女性Hさん。
神経心理検査の書字課題より。
いろいろな気持ちが入り混じっているようですが、
大切な1日になったのだとしたらよかった。