母親のここ最近のもの忘れを心配した次男さんからの依頼で、検査を受けに来たTさん(80歳)。お一人暮らしで、次男さん家族がすぐ近くに住んでいます。
もの忘れについてお尋ねすると、しばし考え「…そんなにない。…たまにあるのかな。…ないわね」と、以前ご紹介したHさんのように「ある」と「ない」と行ったり来たり。
毎日の過ごし方については「週に1回、腰痛体操に行ったり」「昼間は『大人の塗り絵』をしたり」とのこと。この塗り絵も息子さんが買って来てくれたのだそうです。認知症の予防にと思ったのかもしれません。少し遠くに住んでいる長男さんも時々様子を見に来てくれるようで、優しい息子さんたちであることがTさんのお話しぶりから伝わってきました。
さて、「塗り絵に飽きると横になる」と話されたので、他にあまりやることがないのかしらと少し心配になったのも束の間、「あとね、毎晩のように孫が夕飯を食べに来るの」とのこと。夕方からは張り切って食事作りに勤しむようです。
お孫さんは次男さんの長男で、今は20代前半の社会人。まだ赤ちゃんだった頃から幼稚園に入るまで、Tさんが毎日面倒を見ていたそうです。そんなお孫さんが「おばあちゃーん、ごはん食べに来たよー」と(言うかどうかは分かりませんが)仕事帰りにやって来て、おばあちゃんと一緒に食事している様子を想像すると、何だかちょっと涙が出そうになります。
「今日は友だちと食べるから、っていうときは(孫から)連絡が来るの。そういうときもあるからね。週に1~2回はそうやって外で食べてるみたいだけど、あとは毎日来るよ」。
もの忘れの検査の前後に、Tさんはとても嬉しそうに、そんな話を5回くらいされました。
お一人暮らしでも、こんなふうに家族の見守りがあると、認知症があっても軽度くらいであれば十分に生活ができます。
むしろこれくらいの距離感があったほうがいい場合もあります。
そしてお孫さんも協力的だとなおいいし、こんなふうにおばあちゃん子で優しいお孫さんのお話をお聞きすると、とても温かな気持ちになると同時に安心します。

ヒナギクを見ると子どもの頃に住んでいた家の庭を思い出します。大好きな花。デイジーという別名も可愛い。