皇帝ダリア

ある日の昼下がり、区が主催するオレンジカフェに10名ほどの高齢の方々が集っていました。
皆でおしゃべりをしていると、80代の男性がおもむろに、「そういえば、コウテイダリアって知っていますか?」と切り出しました。
「コウテイダリア? 知らないです」と私。
お一人の女性だけは知っていますよというふうに頷かれていましたが、他の方々は皆、首を傾げています。
男性は、「いやー、すごいんだよ。こーんなに伸びて、なんと5mくらいになるんだから! 5mの高さまで成長する花なんて皆さん、信じられますか!?」と身振り手振りを交えて話し、「いやあ、すごいんだよ」と興奮気味に繰り返されました。
「5m? 確かにすごい! コウテイって、皇帝ペンギンの皇帝ですね? エンペラー」と私も興味津々に身を乗り出します。
先程頷かれていた女性が、「皇帝ペンギン…じゃなくて皇帝ダリア、○○公園に植えられていますよ。確かこれから咲くんじゃないかしら」と教えてくださいました。
男性はつい先日、民家の軒先で見つけて初めて知ったらしく、「いやあ、自分は農学校を出て、植物には詳しい方だと思っていたけど、この歳になるまで知らない花もあるんだなあと、もうびっくりしたなんてもんじゃなくて」と、花を知ったのがまるでついさっきのように話されます。

私もそんなダリアがあるんだ! と感動しただけでなく、男性の感動ぶりにも感動してしまいました。
そんなふうに心が動く体験を、いくつになってもしたいものです。

ある男性がスマホで検索して皇帝ダリアの写真を見せてくださいました。
上品な薄ピンク色の花々が、青空に届くかのように凛とそびえていました。