もの忘れ外来での神経心理検査の中に、手の指の名前を言っていただくという呼称課題があります。
先日、80代半ばの女性がこの課題で、「親指、人差し指、中指…」と順調に回答できていましたが、薬指のところではたと止まってしまいました。
1つ飛ばして、「これは小指」と答えた後で再び薬指に戻って、「ええと…」と考えています。
なかなか出てこないようだったので、切り上げようかと思った矢先、
「紅差し指(べにさしゆび)」
おもむろにそう答えられたのです。
「そうそう、紅差し指」
その女性は言葉が出てきてほっとされているようでした。
私はというと、その言葉の美しさにはっとすると同時に、昔の女性が薬指でそっと紅を差している姿が目の前に浮かび、うっとりしてしまいました。
忘れ去られそうなこうした日本語を、しっかりと受け継いでいきたいですね。

紅花は故郷山形の花。6月に花屋で見かけ部屋に飾りました。