今日の文章 2024.2

「今日は色々な検査をして頂いて
嬉しいやら 結果が心配になるやら
大切な1日です。」

80代の女性Hさん。
神経心理検査の書字課題より。
いろいろな気持ちが入り混じっているようですが、
大切な1日になったのだとしたらよかった。

1月に帰省したときの山形市内の風景。今年は雪が少ないとのこと。

一文の機微

前回、もの忘れの程度など様々な認知機能を調べる神経心理検査の課題の1つに文章を書いてもらう書字課題というのがあるとご紹介しましたが、たった一文、書いていただくだけで、その中にも非常にいろいろな個性が見え隠れします。

「今日は病院に来ました」
「今日はいい天気です」
などと当たり障りのないものも多いのですが、はっとさせられるような文章に出会うこともあります。
「この頃、私は何かおかしい」
「私はだんだんだめになりそうです」
などと、もの忘れに伴う不安な胸の内を文章にされる方も少なくありません。
「家族に迷惑をかけています」
などと周囲への申し訳なさをしたためる方もいらっしゃいます。
そんなときはとても切ない気持ちになります。

その一方、思わず顔がほころんでしまうような、ユーモアやセンス溢れる文章と出会うときもあります。

先日検査にいらっしゃったNさんは、3年ほど前に中等度アルツハイマー型認知症と診断された84歳の女性で、今回の長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)とMMSEという30点満点の簡易検査でそれぞれ9点、13点でした。
中等度くらいの認知症になると、検査においてできない課題が多くなるため、嫌になってしまう方も多いのですが、Nさんは最後まで心から楽しそうに、やる課題、やる課題、興味津々といった感じで目をきらきらさせて取り組んでくださいました。

そして件の書字課題ですが、Nさんは少し考えてゆっくりと、用紙に縦に「今日のお知らせ」と書きました。
これだけでは文章ではないので得点になりません。
Nさんはまた少し考えて「娘の」を加えて「今日の娘のお知らせ」に修正。
それでも主語・述語がないと文章にならないため、残念…と思っていると、Nさんは改行して「今日のお昼ごはんは」、そしてまた改行して「ゴーセーですよ!」と書き加えました。
「今日の娘のお知らせ
今日のお昼ごはんは ゴーセーですよ!」
これならOK! どころか、なんてセンス! と私は感動しきり。
びっくりマークもとても可愛らしく書けています。
文章が書ければ1点、書けなければ0点ですが、10点くらいあげたいところでした(もちろんしていませんが)。

Nさんは同居する娘さんの書くメモを頼りに生活されています。そんな娘さんからの「お知らせ」はお昼ごはんに関することでした。
「いつもは残り物とかで簡単に済ますんですけどね。こういう(豪勢な)ときもあるんです」と笑ってNさん。

Nさんは3分前のことも忘れてしまいますが、こういう文章が書けます。
そこも記憶ですが、こういう記憶は頭の中のどこにどうやって存在しているのか不思議です。

Nさんはそんな文章を書いたことも忘れて、私の手引き歩行で娘さんの待つ待合室までゆっくりと戻られました。
そのNさんが3年前に書いた文章は
「このたび面白い経験をさせて頂きました。ありがとうございます」。
そして今回も何度も「ありがとうございます」と述べられていました。
こちらのほうこそ「ありがとうございます」。

可愛らしい花が咲きました!

アメガヤンデ

5年ほど前から年1回の神経心理検査を受けられているNさん(男性)は、大正15年生まれの97歳。
この日も雨上がりの道をお一人でゆっくり15分程歩いて検査を受けに来られました。
もう笑顔が素敵で、いつもNさんとお会いするといっぺんで幸せな気持ちになります。
<お若く見えますね>とお世辞抜きで申し上げると、「昔からうちは男は若づくりの家系なの」とのこと。
検査も一生懸命に、なおかつ楽しそうに受けられて、常ににこにこして、物腰も穏やかです。それでいて、壮絶な体験なども過去にされているのです。
滲み出る優しさと屈託のなさに、何というか、とてもきれいなものを見た、というような気持ちになります。もちろん優しい方はたくさんいますが、ここまで感じさせる方は本当に稀です。
何が違うのだろう…といつも考えさせられます。心根の本当にきれいな方は、ちょっとやり取りするだけで分かるというか、心が震えるような感動があります。いやいや大げさでなく。私もいつかこんなふうになりたい。なれるかな。目標です。

さてさて、神経心理検査には文章を書いてもらう書字課題というのがありますが、Nさんが今回書いたのは、「アメガヤンデ、タスカリマシタ」(表記ママ。以下も同じ)。
何だかチャーミング。
確かに朝方はけっこうな雨でしたが、すっかり晴れ上がりましたものね。

後で過去に書かれた文章を振り返って見たら、初回には「ねぶそくでボヤットして居る」。その後は「今日はよくねむれたよ」「キョウワヨイテンキデス」「おはよう きょうは仕事をしようかな」。そして前回が「キョーワ雨フリデコマリマシタ」。およそ1年毎ですが、何となく繋がっていて楽しい。

「皆から100歳までって言われて、おだてにのっているの」と笑っておっしゃっていましたが、100歳までどころか、その先もずっとお元気で。私にお手本を見せ続けてください。

部屋から見える夕暮れの風景。2023年もあと少し。

皇帝ダリア

ある日の昼下がり、区が主催するオレンジカフェに10名ほどの高齢の方々が集っていました。
皆でおしゃべりをしていると、80代の男性がおもむろに、「そういえば、コウテイダリアって知っていますか?」と切り出しました。
「コウテイダリア? 知らないです」と私。
お一人の女性だけは知っていますよというふうに頷かれていましたが、他の方々は皆、首を傾げています。
男性は、「いやー、すごいんだよ。こーんなに伸びて、なんと5mくらいになるんだから! 5mの高さまで成長する花なんて皆さん、信じられますか!?」と身振り手振りを交えて話し、「いやあ、すごいんだよ」と興奮気味に繰り返されました。
「5m? 確かにすごい! コウテイって、皇帝ペンギンの皇帝ですね? エンペラー」と私も興味津々に身を乗り出します。
先程頷かれていた女性が、「皇帝ペンギン…じゃなくて皇帝ダリア、○○公園に植えられていますよ。確かこれから咲くんじゃないかしら」と教えてくださいました。
男性はつい先日、民家の軒先で見つけて初めて知ったらしく、「いやあ、自分は農学校を出て、植物には詳しい方だと思っていたけど、この歳になるまで知らない花もあるんだなあと、もうびっくりしたなんてもんじゃなくて」と、花を知ったのがまるでついさっきのように話されます。

私もそんなダリアがあるんだ! と感動しただけでなく、男性の感動ぶりにも感動してしまいました。
そんなふうに心が動く体験を、いくつになってもしたいものです。

ある男性がスマホで検索して皇帝ダリアの写真を見せてくださいました。
上品な薄ピンク色の花々が、青空に届くかのように凛とそびえていました。

ミズのぼんぼん

仕事帰りに時々寄る、美味しい和食とクラフトビールのお店。
わくわくしながらまずはビールを選び、さてと、本日のお料理は…とメニューを見ると…ん?
耳慣れない名前がボードに書いてあります。
“ミズのボンボン”
みずのぼんぼん??
可愛い響き。でも何だろ。いろいろ想像が膨らみます。
謎のまま「すみません、ミズのボンボンって何ですか?」と尋ねると、「知らないですか? 知っていると思いますよ」と返ってきました。
「知ってる? 私、知ってる?」「ええ」「じゃあミズって山菜のミズですね。それは分かるけど…」

聞くと、ここの女性店主、つい数日前に山形のとある村の鄙びた温泉宿にふと思い立って泊まりに行ったとのこと。
そこは私の生まれた町からもそう遠く離れておらず、かなりの田舎で豪雪地。
もちろんまだまだ雪は降っていませんが、何でそんな僻地(あ、でももちろんとてもいい温泉地ですよ)を選んだのかも謎。それはここでは置いといて…。
泊まった翌日、彼女は朝市に出かけたそうです。
そこで、こぶのような赤い実をつけた見慣れぬ山菜を見つけ、そばにいた高齢の女性に「これ何ですか?」と尋ねると、そのおばあさんが「知らねの(知らないの)? ミズのぼんぼん」と答えたとのこと。
おばあさんの口真似をする店主の山形弁のイントネーションがばっちりで、「ぼんぼん」の後ろの「ぼん」を強く言うところがすごく可愛くて、思わず「かわいい~」と言うと、店主も「そうなのよ! 響きがすごく可愛くて」そのミズのぼんぼんをたくさんお買い上げ。もちろん響きが可愛いだけでなく、おばあさんから「うんまい(おいしい)よ」とお墨付きをもらったからなのですが。

さっと茹でてからそばつゆなどに一晩漬けるだけで美味な1品になります。
この日は白だしに漬けたものをいただきました。
瑞々しい歯ごたえで、とろっとした粘りとわずかな苦みがあるのが絶妙でくせになる味。箸が止まりません。
ミズのぼんぼん。「知っていると思いますよ」と言われましたが、実は私、知りませんでした。山形在住の頃、ミズは初夏に茎をお浸しとかでよく食べていたのですが、秋の実を食べたことはなかったように思います。
名前もしかり。ただこのネーミングはこの土地ならではのもののようで、調べると秋田とかでは「ミズの子」とか「ミズこぶ」と呼ばれているよう。でも私は「ぼんぼん」が好きだなあ。

故郷である山形の山菜の実を、東京のお店で食しながら、初めてとはいえ懐かしいような気持ちになりました。
そして、「知らねの? ミズのぼんぼん」と言った朝市のおばあさんを想像し、そのフレーズを何度も心の中で繰り返しながら、他のお料理も、ビールも堪能しました。
ちなみにこの日飲んだのは長野と奈良のクラフトビール。ごちそうさまでした。

ミズのぼんぼんとビールで幸せ。

ひとりカラオケ

認知症の妻を自宅で介護しているAさんは80代後半の男性で、税理士として今もお仕事をされています。妻がデイサービスに行っている間に近くの事務所へ赴き、仕事をするのが1つの気分転換になっているそうです。

認知症の家族とずっと一緒はお互いがストレスになる。こんなふうに別々の時間を過ごすのは大切なこと。

「仕事が好き」と話すAさん。やはり好きなことをして過ごす時間が何よりの気分転換になるでしょうから、いいストレス解消法をお持ちだなと思ったのですが、実はこれだけにとどまりませんでした。出てくる、出てくる・・・。

学生の頃からの麻雀好きで、当時は仲間と夜な夜な明け方までじゃらじゃらやっていたそうですが、「あれのよくないところはね、4人集まらないとできないってことだよ」。
今はなかなか相手が集まらないため、もっぱらケータイゲームだそうです。電車の中などで、読む本がなくなるとスマホで麻雀。相手に不足なしとのこと。

また若い頃から歌も好きでよくカラオケに行っていたというAさん。「ハチトラって知ってる?」ハチ? トラ? ・・・
昭和40年代のカラオケは「8トラ」と呼ばれていたそうで、8トラック・カートリッジテープの略とのこと。4曲入りのテープを機械にガチャッと入れて使用していたようです。
カセットテープよりさらに古い時代ですね。

Aさん、今もカラオケには時々行くそうですが、なんと、カラオケボックスで一人カラオケも!
「おばあさん(妻のこと)に内緒で、仕事の帰りにちょこっと寄る。おばあさんに言うと『そんなところで遊んで!』って怒られるからね(笑)」

そしてカラオケの得点システムを楽しまれています。
「この前は96点だったよ。全国で12位だって」。すごい!
「いやいや、100点なんて人も何人かいるからね。でも誰もあまり歌ってない歌だと、すぐに1位になれるよ」。
何を歌ったんですか?「ミス・コロムビアの『悲しき子守唄』とかね」。
ミス・コロムビアとは主に戦前期に活躍した女性歌手、松原操の別名のようです。

他にも「おばあさんと1日過ごす日曜日の楽しみは畑」とのこと。
日曜日以外は妻はデイサービスや訪問看護といった何かしらのサービスを利用しているため、まるまる1日2人で一緒に過ごすのは日曜日だけだそうです。
家のすぐそばにある畑なので「何かあっておばあさんに呼ばれてもすぐに行ける」。これが大事とのこと。

野菜作りでいい汗をかいているそうですが、先日「収穫した落花生を干している間に全部カラスに持って行かれた!」と。
とても悔しそうでしたが、そんな話もどこか楽し気で。

介護の大変さだけでなく、Aさんの好きなことをたくさん聞けました。
帰って早速『悲しき子守唄』を聴いてみると、この歌をしっとりと歌いあげているAさんの姿が思い浮かびました。

通りすがりのサルスベリも残暑に少々お疲れのようで…

べにさしゆび

もの忘れ外来での神経心理検査の中に、手の指の名前を言っていただくという呼称課題があります。
先日、80代半ばの女性がこの課題で、「親指、人差し指、中指…」と順調に回答できていましたが、薬指のところではたと止まってしまいました。
1つ飛ばして、「これは小指」と答えた後で再び薬指に戻って、「ええと…」と考えています。
なかなか出てこないようだったので、切り上げようかと思った矢先、
「紅差し指(べにさしゆび)」
おもむろにそう答えられたのです。
「そうそう、紅差し指」
その女性は言葉が出てきてほっとされているようでした。

私はというと、その言葉の美しさにはっとすると同時に、昔の女性が薬指でそっと紅を差している姿が目の前に浮かび、うっとりしてしまいました。

忘れ去られそうなこうした日本語を、しっかりと受け継いでいきたいですね。

紅花は故郷山形の花6月に花屋で見かけ部屋に飾りました。

ゆりかごの赤ちゃん

2年ほど前、病院のもの忘れ外来で神経心理検査を取らせていただいたとき、ある女性のしてくださった話がずっと心に残っています。
当時90歳で、エレベーターのない団地の4階でお一人暮らしをされており、白髪のショートカットで銀縁メガネをかけた、上品な印象の方でした。度の強いメガネのせいか、目が少し大きく見えました。
明らかな近時記憶障害と、軽い見当識障害がありましたが、それ以外はしっかりとされていました。

「何か心配なこと、気になることはありませんか?」の質問にはこう答えられました。
「特にないですね。長男と次男の嫁たちが毎日電話かメールをくれる。心配なんでしょうねえ、やっぱり。忙しいから、メールが多いかな。『今、朝ごはんを食べました』とか、一言ですよ、メールっていっても。でもそれでも安心するらしくて」。

そしてどうしてその話になったのか覚えていませんが、こんな話を始めたのです。

「近所のご夫婦が、40代で初めて子どもができて。ご主人が46歳で、奥さんが41歳だったかな。16年目でやっと授かって。そのお子さんを、うちで預かることになったの。『もしも何かあったとしても、決して責任を問うたりしませんから、みてもらえませんか』ってお願いされて。」

唐突に始まった話に初め私は、今のできごとかと思いましたが、思い出話のようです。

「そのとき主人は定年退職したばかりで、何もしないで家にいたから、『お前は一切何もしなくていいからそこにいろ』って私に言って、家の中のことを全部やってくれて。私は、流しにお皿がたまっていても、何があっても、赤ちゃんのそばを離れないで、ずっと見ていたの。毎朝、その子のお父さんが着替えとミルクをゆりかごの中に一緒に入れて預けに来るから、そのゆりかごを、上に(落ちてくるような物は)何もない部屋の隅において、私は一日中ずっと見ていたの。1年以上かな。当時は生まれたばかりの赤ちゃんを預けられるようなところはまだなくて、そのうち、新しい保育所ができたから、それまではうちでずっと。
その子がね、もう30いくつで、家から歩いて10分くらいのところに住んでいるんだけど、私を本当のおばあちゃんのように思っているって言ってくれて…」。

幸せそうに、愛おしそうに、その女性は微笑みました。

いい話だなあと思ってずっと聞いていました。

今年初、セミの抜け殻発見。壁のデコボコにつかまって羽化したようです。

鳥の世界

何回目かの神経心理検査を受けに来られたYさんは95歳の女性ですが、自ら「97歳」と述べられました。昨年94歳のときは「95歳」と答えられていたようなので、Yさんのなかではいつしか少しずつ時間が早く過ぎているようです。

少し会話しただけでイントネーションで感づいて(東北の人だな)、出身を尋ねると案の定。しかも同郷(山形県)でした。

「田舎弁丸出しだからね」。「田舎弁」という言葉すら懐かしい。

検査の書字課題では「毎日が忙しい」と記されました。
「インコを飼っているから、その世話で忙しいの。餌をあげたり、お水を交換したり。お花も好きだからいろいろ世話している」とのこと。

娘さんが3人、息子さんが1人いらっしゃいます。Yさんはかつて今でいう家庭科の教員をしていたそうですが、お子さんのうちのお2人も学校の先生をしていたとのこと。もう定年退職されているそうですが。

お話は流暢でしっかりとされていて、表情も若々しく、とても95歳には見えません。思わずそう述べると、「97歳よ」と訂正されました。

「でも頭はずっと前から老化。ぼうっとしちゃって、鳥の世界になっているから」と笑う。

「仏様に毎日お水をあげて、ごはんをあげて。そのために生きているのかなと思う。『いつ死ぬんだろうね』って娘たちといつも話してます」とさらりと話される。

検査後に、お互い雪国育ちの苦労話などを笑いながらひとしきりしゃべって、待合の娘さんのもとへご案内すると、「そちらから笑い声が聞こえてきて。こんなに明るい声は久しぶりに聞きました」と娘さんも朗らかに話されました。
私も本当に楽しいのです。95歳の方とおしゃべりできるのはとても光栄で幸せなこと。

それにしても「鳥の世界」ってどんななんだろう? しばらく想像を巡らせました。

桜並木は今は涼やかな緑のトンネルです。

孫とごはん

母親のここ最近のもの忘れを心配した次男さんからの依頼で、検査を受けに来たTさん(80歳)。お一人暮らしで、次男さん家族がすぐ近くに住んでいます。
もの忘れについてお尋ねすると、しばし考え「…そんなにない。…たまにあるのかな。…ないわね」と、以前ご紹介したHさんのように「ある」と「ない」と行ったり来たり。
毎日の過ごし方については「週に1回、腰痛体操に行ったり」「昼間は『大人の塗り絵』をしたり」とのこと。この塗り絵も息子さんが買って来てくれたのだそうです。認知症の予防にと思ったのかもしれません。少し遠くに住んでいる長男さんも時々様子を見に来てくれるようで、優しい息子さんたちであることがTさんのお話しぶりから伝わってきました。

さて、「塗り絵に飽きると横になる」と話されたので、他にあまりやることがないのかしらと少し心配になったのも束の間、「あとね、毎晩のように孫が夕飯を食べに来るの」とのこと。夕方からは張り切って食事作りに勤しむようです。
お孫さんは次男さんの長男で、今は20代前半の社会人。まだ赤ちゃんだった頃から幼稚園に入るまで、Tさんが毎日面倒を見ていたそうです。そんなお孫さんが「おばあちゃーん、ごはん食べに来たよー」と(言うかどうかは分かりませんが)仕事帰りにやって来て、おばあちゃんと一緒に食事している様子を想像すると、何だかちょっと涙が出そうになります。
「今日は友だちと食べるから、っていうときは(孫から)連絡が来るの。そういうときもあるからね。週に1~2回はそうやって外で食べてるみたいだけど、あとは毎日来るよ」。
もの忘れの検査の前後に、Tさんはとても嬉しそうに、そんな話を5回くらいされました。

お一人暮らしでも、こんなふうに家族の見守りがあると、認知症があっても軽度くらいであれば十分に生活ができます。
むしろこれくらいの距離感があったほうがいい場合もあります。
そしてお孫さんも協力的だとなおいいし、こんなふうにおばあちゃん子で優しいお孫さんのお話をお聞きすると、とても温かな気持ちになると同時に安心します。

ヒナギクを見ると子どもの頃に住んでいた家の庭を思い出します。大好きな花。デイジーという別名も可愛い。