何回目かの神経心理検査を受けに来られたYさんは95歳の女性ですが、自ら「97歳」と述べられました。昨年94歳のときは「95歳」と答えられていたようなので、Yさんのなかではいつしか少しずつ時間が早く過ぎているようです。
少し会話しただけでイントネーションで感づいて(東北の人だな)、出身を尋ねると案の定。しかも同郷(山形県)でした。
「田舎弁丸出しだからね」。「田舎弁」という言葉すら懐かしい。
検査の書字課題では「毎日が忙しい」と記されました。
「インコを飼っているから、その世話で忙しいの。餌をあげたり、お水を交換したり。お花も好きだからいろいろ世話している」とのこと。
娘さんが3人、息子さんが1人いらっしゃいます。Yさんはかつて今でいう家庭科の教員をしていたそうですが、お子さんのうちのお2人も学校の先生をしていたとのこと。もう定年退職されているそうですが。
お話は流暢でしっかりとされていて、表情も若々しく、とても95歳には見えません。思わずそう述べると、「97歳よ」と訂正されました。
「でも頭はずっと前から老化。ぼうっとしちゃって、鳥の世界になっているから」と笑う。
「仏様に毎日お水をあげて、ごはんをあげて。そのために生きているのかなと思う。『いつ死ぬんだろうね』って娘たちといつも話してます」とさらりと話される。
検査後に、お互い雪国育ちの苦労話などを笑いながらひとしきりしゃべって、待合の娘さんのもとへご案内すると、「そちらから笑い声が聞こえてきて。こんなに明るい声は久しぶりに聞きました」と娘さんも朗らかに話されました。
私も本当に楽しいのです。95歳の方とおしゃべりできるのはとても光栄で幸せなこと。
それにしても「鳥の世界」ってどんななんだろう? しばらく想像を巡らせました。

桜並木は今は涼やかな緑のトンネルです。