「3か月くらい前に、急に歩けなくなって」
もの忘れ外来での神経心理検査前のフリートーク時、80代の女性Yさんはおもむろにそう述べ、次のように語りました。
「同居している長男夫婦がいつも旅行に連れて行ってくれる。なのでたまには夫婦2人で行ってらっしゃいと、毎年1回は2人だけで行ってもらっている。
ところが今年は、その旅行の当日に突然、歩けなくなった。
なので夫婦旅行はキャンセルになってね。
・・・そんなことがありました」。
<そうでしたか・・・>私が言うと、少し間を置いて、
「今思うと、今年は1人になるのが不安だったのかもしれないわね」とYさん。
そんなふうに振り返られるのはすごいなと思いました。
心と身体って本当に不思議で、こういうことはよくあるのですが、ほとんど無意識です。偶然、たまたま、で終わらせます。
人は自分の弱さをあまり認めたくありませんから。
静かに語るYさんの優しいまなざしを見つめながら、長男さんご夫婦も、きっと優しい強さを持った方々なのではないだろうかと想像しました。
